YOSHIMI裁判いっしょにアクション!
「吉見裁判」とは、中央大学の吉見義明さんが、日本維新の会の桜内文城衆議院議員(当時)を名誉毀損で訴えた裁判です。

2015-03-19

吉見裁判 第7回口頭弁論&合同報告集会のお知らせ

***************************
吉見裁判第7回口頭弁論
***************************

 DATE:2015年4月20日(月曜日)
 TIME:午後1時30分~4時30分
 PLACE:東京地方裁判所103号大法廷


★東京地裁アクセス
東京メトロ丸の内線・日比谷線・千代田線「霞ヶ関」駅A1出口より徒歩1分。
有楽町線「桜田門」駅5番出口より徒歩3分

※当日は傍聴券が発行され、抽選が行われる予定です。12時45分までにご来場お願いします。また、直前の急な変更もありますので、お出かけ前にご確認ください。

 吉見義明教授の著書を「ねつ造」と発言した桜内文城元衆議委員議員を名誉毀損で訴えたYOSHIMI裁判は、被告側が「慰安婦=性奴隷はねつ造」と法廷で主張したことを機に、日本軍「慰安婦」制度が性奴隷制度に他ならなかったことを明らかにする裁判になっています。
 そして第7回口頭弁論では、日本軍「慰安婦」制度が性奴隷制度以外の何ものでもなかったことを、国際法に照らして明らかにした阿部浩己神奈川大学教授の証人尋問が行われます。また、被告本人尋問もあります。
 どうか、多くの方が傍聴に駆けつけ、応援してください!!


***************************
吉見裁判&ニコン裁判
合同報告集会
***************************

 DATE:2015年4月20日(月曜日)
 TIME:18:00~(開場17:45)
 PLACE:中央大学駿河台記念館670号室
(東京都千代田区神田駿河台3-11-5、JR中央・総武線「御茶ノ水駅」徒歩3分、東京メトロ丸の内線「御茶ノ水駅」徒歩6分、東京メトロ千代田線「新御茶ノ水駅」徒歩5分)

※参加費500円

 吉見裁判も第7回まで口頭弁論が進みました!そしてこの日は、フォトジャーナリストの安世鴻さんがニコンを提訴した裁判の第11回口頭弁論が、同じ東京地裁で午後1時30分からおこなわれます!
 
 そこで!今回も、私たち「YOいっション」と「教えて!ニコンさん」で、<合同報告集会>を開催することになりました!ゲストには、吉見裁判側から阿部浩己さん(国際法学者、神奈川大学教授)を、そしてニコン裁判側から宮下紘さん(憲法学者、中央大学准教授)をそれぞれお迎えして、発言していただきます!また、両裁判の弁護団による報告と、原告である吉見義明さん、安世鴻さんのあいさつも予定しております!
 
 どちらの裁判も、現在、山場を迎えつつあります!みなさま奮ってご参加・ご支援よろしくお願いします!!



2015-03-18

吉見裁判 第6回口頭弁論&拡大集会 参加記

吉見裁判第6回口頭弁論
参加記

 20141215日(月)午後3時より、吉見裁判第6回口頭弁論が、東京地裁103号大法廷で行われ、約100席分の傍聴席が用意されました。その傍聴券を求めて、約200 人の市民が並びました。第5回に比べて、全体的に年齢層は高めであり、特に被告人側を支援していると思われる人々は中年以上の男性の姿が目立ちました。なお今回は、韓国のKBSテレビが法廷取材に来ていました。当然ながら、韓国でも注目度が高いことが伺えます。今までにない雰囲気があるとすれば、テレビ撮影用の時間があったことでしょうか。では、口頭弁論の様子を簡単に確認していきます。

<原告側の主張>
 今回の口頭弁論の最も注目すべき点は、日本軍「慰安婦」制度と性奴隷制との関係について、国際法に照らして主張したことです。まず、川上弁護士が阿部浩己教授(神奈川大学・国際法)の意見書に基づきまとめた準備書面(6)の要旨を陳述しました。

川上弁護士は、「慰安婦」制度が性奴隷制度であるかは、「慰安婦」の状態が奴隷条約第1条(1)で定める「奴隷制度」の定義に該当し、かつ、被害者が性的な性質をもった行為に関与させられていたか否かによるが、「慰安婦」が性的な行為に関与させられていたことは明らかであることから、問題は、「慰安婦」の状態が奴隷条約上の「奴隷制度」の定義に該当するかにあるとしたうえで、奴隷条約上の「奴隷制度」の概念について、次のように述べました。
1926年に制定された奴隷条約第1条(1)は、「奴隷制度」とは、「所有権に伴う一部又は全部の機能が行使される個人の地位又は状態」と定めています。ポイントの第一は、「地位」だけではなく「状態」という文言が使われていることです。「地位」とは法上の意味であるのに対して、「状態」とは事実上のことを意味しています。「慰安婦」の状態について、法的な意味に限定するのではなく事実状態に着目している点は重要です。ポイントの第二は、「所有権の行使」ではなく「所有権に伴う権能の行使」と書かれていることです。「所有権」とは「物」に対する全面的な支配権であり、通常、自由に物を使用、収益及び処分をする権利とされています。ところで、「人」は「物」を支配することはできますが、「人」を支配することはできません。近代法では、全ての「人」はだれでも独立した人格を有する者として最高の価値を持っているからです。そのため、問われるべきことは「人」に対する「所有権」の有無ではなく「所有権に伴う権能」、すなわち所有権に伴う使用、収益及び処分をする権能の一部又は全部が行使されているかということになります。すなわち、「物」を支配するのと同じように「人」を支配すること、換言すれば、人間の自由・自律性の重大な剥奪をもたらしているかを判断することになります。
このように、「奴隷制度」かどうかは、事実上、ある人の自由や自律性が重大に剥奪されている状態にあるかがポイントです。したがって、仮に被害者が報酬を得たり、人道的な扱いがされていたとしても、それが支配の一形態にすぎないのであれば、奴隷制の本質が損なわれたことにはなりません。また、被害者が置かれている事実上の状態に着目するので、ある人がどのような方法でそのような状態に至ったのかは本質的な問題ではありません。強制連行されたかどうかは本質的な問題ではないということです。
次に、どのような場合に「所有権に伴う一部又は全部の権能」の行使といえるのか。それについて、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所で下されたKunarac事件等を紹介しながら、当該事案ごとに、移動の支配、物理的環境の支配、心理的支配、逃亡を防止し又は抑止するためにとられる措置、力による威嚇又は強要、期間、排他性の主張、残虐な取扱及び虐待を受けること、セクシュアリティの支配、強制労働などの「徴証」の有無が参考になることを指摘しました。
 そのうえで、原告である吉見先生の著書『従軍慰安婦』に書かれている「慰安婦」の置かれていた状態について、これら「徴証」に照らして検討した結果、これまで述べてきた「性奴隷制度」の要件を充たすことを明らかにしました。
 その後、被告の国際法上の主張への反論を述べた後、最後に、被告は、原告が「慰安婦」制度が性奴隷制度でないことを知りながら、性奴隷制度であると拵え、でっち上げた(ねつ造)と主張しているが、国際法上も、また国際社会の言説状況に照らしても、「慰安婦」制度が性奴隷制度であるとされており、原告もそのように確信していたこと、したがって、原告がその著作の中で「慰安婦」制度が性奴隷制度であると述べていることに関して「ねつ造」したとの被告の主張がいかに荒唐無稽な主張であるかは明らかであると述べました。

川上弁護士についで原告側の緒方弁護士が、準備書面(8)の前半部分について陳述しました。その内容は、被告側の様々な弁明にもかかわらず、この記者会見で被告が述べた、「吉見さんという方の本を引用されておりましたけれども、これは捏造である・・」という文章は吉見さんの本が捏造である、としかうけとれない内容であること、この発言でも名誉毀損として内容が特定されており、名誉毀損は成立すること、仮に被告が吉見さんの本を読んでいなくても名誉毀損は成立すること、などの点を丁寧に説明しました。
 ついで、大森弁護士が、被告の陳述書に関連して、その論理の飛躍と根拠のなさを陳述しました。被告は最近の朝日新聞の記事訂正問題で、女性たちを「慰安婦」にするために強制連行したという吉田清治の証言が虚偽として取り消された以上、強制連行はなかった、したがって「慰安婦は性奴隷」ではない、原告の「慰安婦=性奴隷」という主張はその根拠を失ったのだから、原告がこの虚偽の事実を捏造したことが白日のもとに晒された、
とのべています。しかし、そもそも原告はいかなる意味でも吉田清治氏の証言を自分の研究において使用したことはなく、被告のような強制連行がなければ「慰安婦」問題はなかったかのような議論にくみしたこともない、ということをのべ、いかに被告の論理がデタラメなものかを陳述しました。
 なお準備書面(7)は、口頭では陳述されませんでしたが、原告がいかにその研究において高い評価を得てきたか、それに対して被告の行動はいかに深く原告の名誉を傷つけたかについて詳細に述べたものでした。

<被告側とのやり取り>
 次に被告側代理人は、桜内氏の本人尋問と秦郁彦氏の証人申請を行いました。これに対して、秦氏を証人として採用するかどうかについて、やりとりが行われました。
 被告は、秦氏を尋問しないのであれば、阿部浩己氏を尋問する必要はないとの考えを述べたのに対して、裁判長は、吉見先生の著書に阿部論文が引用されていることを指摘し、阿部氏の尋問は問題ない旨述べました。そのうえで、被告代理人に対して、尋問の趣旨に関して、「慰安婦」制度が国際法上性奴隷制度ではないことを明らかにする旨記載されているが、国際法学者でない秦氏が適格なのか疑問を呈しました。そして、陳述書が提出されないことには秦氏の証人採用を判断できないことから、秦氏を尋問するのであれば310日までに陳述書を提出するよう述べ、それを受けて316日に進行協議を行うことを決めて、この日の弁論は終わりました。

 <今後の予定>
 316日に代理人による進行協議が行われます。次回の期日は420日(月)午後130分から103号法定で阿部浩己教授の証人尋問と被告本人尋問が予定されています。

(一事務局員)


6回集会参加記

 第6回口頭弁論が開かれた1215日午後4時、東京地裁では日本軍「性奴隷」制度に関わる、もう一つの重要な裁判の弁論があった。フォトジャーナリストの安世鴻さんがニコンを提訴した裁判(以下「ニコン裁判」とする)の第9回口頭弁論である。そこで、吉見裁判支援の「YOいっション」と安世鴻裁判支援の「教えて! ニコンさん」は、この機会に合同で「拡大報告集会」を開催することにした。
同日午後 6:00、文京区民センター2A 会議室で「安世鴻さんと吉見義明さんがいっしょにアクション」拡大報告集会が始まった。まず、「教えて!ニコンさん」の永田浩三さんがはじめのあいさつに立ち、昨今の「慰安婦」バッシングや表現の自由を巡る問題、そして両方の裁判の重要性などポイントを絞って述べた。

n   弁護団の報告
 次に両弁護団の裁判報告が行われた。まず、吉見裁判からは大森典子弁護士が第5回までの裁判経緯を述べ、当日行われた第6回の裁判の焦点である日本軍「慰安婦」は性奴隷制であるか、という論点について説明した。最後に、この日の裁判・報告集会に合わせて作成した、「YOいっション」発行の冊子『日本軍「慰安婦」制度はなぜ性奴隷制度と言えるのか』を紹介し、次回以降の裁判内容の予告を行った。
 続いてニコン裁判の弁護団の李春熙弁護士が、提訴の理由と、当日の弁論について述べた。概要は以下のとおり。2012521日、新宿ニコンサロンで開催される予定だった中国に残された日本軍「慰安婦」を題材にした写真展が、突然中止通告を受けた(「重重~中国に残された日本軍朝鮮人元『慰安婦』写真展」)。それに対して、写真家安世鴻さんは、東京地裁の施設使用を命じる仮処分決定のもと写真展を開催し、このことは社会の大きな反響を呼んだが、ニコンは、その後も中止通告は有効であり写真展には協力できないという態度を変えず、大阪ニコンサロンで予定されていたアンコール展は開催に至らなかった。原告である安世鴻さんは、ニコン側の突然の中止通告とそれに続く写真展への協力拒絶行為に対し、債務不履行にあたるとともに、写真家としての社会的評価を著しく低下させ、人格権を侵害するものであって、不法行為に該当するとして訴訟を起こした。(一部抜粋「ニコン『慰安婦』写真展中止事件裁判とは」://oshietenikon.net/about/2015年3月6日最終閲覧)

n   ライフワークとしての「慰安婦」問題
 続いて本日のメインイベントである吉見義明さんと安世鴻さんの対談が行われた。「慰安婦」問題の実態を追求し、事実を発信し続ける吉見さん、被害女性たちについて、写真を通じて伝え残そうとする安世鴻さん。コーディネーターの岡本有佳さんが、それぞれのライフワークと熱い思いを引き出していった。
 安世鴻さんは、199625歳のときに「ナヌムの家」を訪れ、初めて「慰安婦」問題を知った。しかし、その頃は「何かする」わけでもなく、あまり「芯」がないような写真を撮っていた。2005年に吉見先生の著書を読んでから、何を伝えるべきかがわかり、現在に至ったという。社会問題以外にも、韓国の伝統文化の写真展をやっている。一方、吉見さんは、毒ガスの研究をしている際に、「慰安婦」制度を知るようになり、本格的に研究をするようになった。

n   学生時代
 現代社会において、問題が混迷している「慰安婦」の問題に取り組んでいる写真家—言い換えれば社会派—の安世鴻さんだが、高校時代は、数学と物理が得意な典型的な理系で、社会と国語が不得意だったそうだ。他方で、吉見さんは、社会と国語が得意で、数学と物理が不得意だったそうだ。思わず「うん納得!」と言いたくなる。もちろん、高校時代の得意不得意で人生が決定するわけではないが、お二人の過去と現在のお仕事の関係性を知ることができた貴重な機会であった。

n   裁判の原告となること
 弁護士には悪いが、できるなら裁判に関わる状況は避けたい。そう思うのは私だけでないだろう。それでも、原告になり、たくさんの労力を割くのはなぜだろうか。改めて聞きたいことに、お二人は誠実に答えてくれた。
 安世鴻さんは、写真は撮る対象と撮られる対象が互いに相互関係を持っているもので、一種のコミュニケーションであると述べた。そして、被害女性たちの存在は、写真家だけ語っているのではなく、その先にいる人々に対して伝えたいと思っているため、写真展を開催する意味がある、と述べた。裁判の原告になった理由は、そういった「語り」が抑圧されたら、自分以外の人々も表現ができなくなってしまう状況に黙っていられないし、このような空間を守るためにも、「慰安婦」被害者のことを伝えるためである。最後に、「それぞれの役割とそれぞれの場所で行い,シナジー効果を持っていけば、問題の解決も早まるだろう」と問題解決の糸口についても触れた。
 吉見さんは、「橋下知事の発言」や現政権への批判があり、さらに,桜内議員のような「ねつ造」という発言には黙っていられないし、これに対して何もしなければ、研究者生命の終わりを意味している、と述べた。一人の力は弱いけれど、多くの人が集まれば問題は理解されるだろう。日本の普通の人々の民衆意識についてもしっかりと考えていいかなくてはいけない。それは、戦争中の民衆意識、戦後の民衆意識などについて同様であるとし、自身の問題意識と裁判の意味を述べた。

n   質疑応答
 続いて、会場からの質問にそれぞれが答えた。まずは、「被害女性の声を聞いたときの気持ちを教えてください」という質問に吉見さんは、歴史資料としては了解していたが、実際に被害者(金学順さん)がいたことが衝撃であったと答えた。また、被害者が名乗り出る事で、世界に問題が共有されたため、昨今話題になっている吉田証言はあまり大きな影響力はなかったことも付け加えた。
 安世鴻さんへは、被害女性の写真を撮ることについて質問がされた。安さんは、当初は男性であるため「恥ずかしい」思いもあり、また、ハルモニのことをよくわかっていなかったと語った。そのため、実際に会ったら頭が混乱し、表面上の写真しか撮っていなかった。それから3年ほどボランティア活動をして、頭ではなく、心で感じるようになり、それから写真が変わったと、現在のように、ハルモニたちに寄り添う写真が撮れるようになった経緯を丁寧に語った。

n   集会に参加してー日本の右傾化と両裁判の意義
 吉見裁判は、今の潮流の代表のような存在である桜内元議員を相手取った裁判である。その相手側の陳述書は、論点ぼかしや精密さに欠ける点がある。なによりも誠実さにかける態度に、日本の傾きを感じないわけにはいかない。さらに、被告側は「吉田証言が撤回されたから『慰安婦』問題はなかった」などという、根拠も論理もない発言を法廷で行っている。それらも含め、日本軍「慰安婦」制度の実態を法廷で明らかにする意義は大きいだろう。
 他方で「表現の自由」を保障しているニコンは、安世鴻さんの作品をすばらしいと言っているそうだ。そのために、ニコン裁判はある意味で難しい裁判とも言える。また裁判所も中立を装いながら、世の中の右傾化の流れに逆らえないでいる可能性もある。以上のようなことも含め、当たり前のことを当たり前とする判決がでることが大事である。
 拡大報告集会は、「慰安婦」をめぐって司法がどのような判断をし、日本社会がどうそれらを受け止めて、今後の問題関心へと継続させていくのかを再考させ、「慰安婦」の姿を見えなくさせないためにも、事実をねじ曲げる風潮に対して、わたしたちは何ができるのか?を双方の裁判・お二人の経験から学ぶものであった。今後は、これらを受けて私たちがどれだけ自分のこととして、それぞれの持ち場で、解決を図る行動が可能か、問われている。

(一事務局員)