YOSHIMI裁判いっしょにアクション!
「吉見裁判」とは、中央大学の吉見義明さんが、日本維新の会の桜内文城衆議院議員(当時)を名誉毀損で訴えた裁判です。

2014-12-09

吉見裁判 第6回口頭弁論&拡大報告集会のお知らせ

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吉見裁判第6回口頭弁論
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 日時: 2014年12月15日(月曜日)、午後3時~

 場所: 東京地方裁判所 103号 大法廷

Access→ 東京メトロ丸ノ内線・日比谷線・千代田線、霞ヶ関駅A1出口から徒歩1分。有楽町線、桜田門駅5番出口から徒歩3分。 

!!直前の急な変更もあります。お出かけ前にご確認ください !!
!! 当日は傍聴券が発行され、抽選が行われる見通しです !!

※これまでの口頭弁論では 14 時 40 分までに来た方を対象として、
抽選が実施されています。お早めのご来場をお願いします。



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--安世鴻さんと吉見義明さんがいっしょにアクション--
拡大報告集会
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DATE: 2014 年 12 月 15 日
TIME: 午後 6:00~
PLACE: 文京区民センター(2 階 2A 会議室)
(都営三田線・大江戸線「春日」駅A2出口徒歩2分、東京メトロ丸ノ内線「後楽園」駅4b出口徒歩5分
東京メトロ南北線「後楽園」駅 6 番出口徒歩 5 分、JR「水道橋」駅東口徒歩 15 分)

 吉見裁判も第6回まで口頭弁論が進みました!そしてなんと!この日は偶然にも、フォトジャー
ナリストの安世鴻さんがニコンを提訴した裁判の第9回口頭弁論が、同じ東京地裁で午後4時から
おこなわれます!
 私たち「YOいっション」と「教えて!ニコンさん」は、この機会にいっしょに〈拡大報告集会〉を開
くことにしました!いま、「慰安婦」をめぐって法廷で何が争われているのか?そして、「慰安婦」
の姿を見えなくさせ、事実をねじ曲げる風潮に対して、わたしたちは何ができるのか?
吉見義明さん、安世鴻さんがライフワークとしている「慰安婦」問題について、それぞれの取り組
み、思いを語ります。「慰安婦」の実態を追求し、事実を発信し続ける吉見さん、そして彼女たちの
姿を写真を通じて伝え残そうとする安世鴻さん…研究者と写真家、異色のコラボレーションをぜひ
お見逃しなく!

報告集会の内容:
弁護団による裁判経過報告(大森典子さん &ほか1名調整中)
トークセッション! 安世鴻さん & 吉見義明さん

(安世鴻さんの裁判は、午後4時より721号法廷でおこなわれます。こちらもぜひ傍聴にお越しください!)

2014-09-30

講演会:日本軍「慰安婦」問題――私たちに何ができるのか

講演会
日本軍「慰安婦」問題――私たちに何ができるのか
主催:YOSHIMI裁判いっしょにアクション

 日本軍「慰安婦」問題は、現在まで解決されていません。私たちはこの問題にどのように向き合っていけばいいでしょうか。
 この講演会では、日本軍「慰安婦」問題に関する映像を鑑賞した上で、この問題の第一人者である中央大学教授・吉見義明さんと、国際法学者の神奈川大学教授・阿部浩己さんに、ご講演いただきます。
 
日時:2014年112日(日)14〜17時
場所:一橋大学国立西キャンパス本館26番教室
   (JR中央線国立駅より徒歩7分)
大学までの案内図:

プログラム:
・日本軍「慰安婦」に関する映像鑑賞
講演:日本軍「慰安婦」は、 なぜ性奴隷といえるのか
  吉見義明さん:歴史学の視点から(映像解説含む)  
  阿部浩己さん:国際法の視点から 
参加費:無料
※この講演会は、一橋大学の学園祭「一橋祭」の一企画として開催するものです。
当日は、国立駅より大学までの道が大変混雑することが予想されます。
お早めのご来場をお願いいたします。

*一橋祭については
http://ikkyosai.m29.coreserver.jp
をご覧下さい。


2014-09-16

吉見裁判第5回口頭弁論&報告集会 参加記

吉見裁判第5回口頭弁論&報告集会 参加記

1.第5回口頭弁論
 201498日(月)午後3時より、吉見裁判第5回口頭弁論が、東京地裁103号大法廷で開かれました。約100席分の傍聴券を求めて、地裁前に約200人が並びました。
 今回の口頭弁論では、被告(桜内)側が第三準備書面の要旨を述べ、それに対して原告(吉見)側が第五準備書面の要旨を述べました。

<被告側の主張>
 これまで被告側は「これは捏造」の「これ」は吉見氏の本を指すのではなく「慰安婦性奴隷説」のことであり、名誉毀損は成立しないと主張してきました。今回もこの主張をくり返しました。
 ただし、今回は加えて、被告側は①「慰安婦は『性奴隷』ではないことの証明」(「真実性の抗弁」と呼ぶそうです)をするとともに、②「少なくとも、そう信じることにつき相当の理由があることを主張・立証」(「相当性の抗弁」)する、としました。
 まず、①被告側は、「慰安婦性奴隷説は捏造であ」り、「仮に、被告の本件発言が、被告の意図はどうあれ、客観的には原告の著書に言及したものと解されたとしても、原告の著書の中で、慰安婦は性奴隷であると断定している部分は捏造である」と述べました。そして、原告は「慰安婦」が国際法上の「奴隷」または「性奴隷」の定義・要件に該当しないことを熟知しながら、かつ、原告が自ら主張する「性奴隷制」の「4つの要件」(「拒否する自由」・「外出の自由」・「廃業の自由」・「居住の自由」がないこと)にすら該当しないことを知りながら、自らの「政治的主張」を潜り込ませることにより書いたのであるから、捏造されたものであると主張しました。「4つの要件」をめぐって被告側は、「拒否する自由」・「外出の自由」・「廃業の自由」が「慰安婦」には認められていたと主張しました(「居住の自由」については後述)。次に②「相当性の抗弁」についてですが、①で主張したことを踏まえれば、被告が「慰安婦」を性奴隷でないと信ずるのは「相当の理由」があるとしました。
 さて、ここまでが、第三準備書面を読み上げる形での主張でしたが、被告側は口頭弁論直前に追加の証拠(朝日新聞85日付の「慰安婦」問題の検証記事等)を提出していました。この「証拠」に基づき、被告側は、「慰安婦」問題は、日本の官憲による強制連行が行われたことが前提であり、朝日新聞の検証記事でそれは崩れた、したがって、「慰安婦」問題の根本、原告の根拠は揺らいでいるのだ、と主張しました。

<原告側の反論>
 原告代理人の大森典子弁護士は以下のように反論しました。
 まず、今回問題となった被告発言は、一般の聴取者は「吉見義明氏の慰安婦問題に関する本は吉見氏がねつ造して書いたものである」と理解することになるのだから、「慰安婦」問題に関する本の中で原告が事実でない事を事実のようにだまして書いたという事実を、被告側は主張・立証しなければならない、と確認しました。
 次に、「慰安婦」の実情が「国際法上の定義」に該当しないとの被告側の主張に対しては、次回口頭弁論で反論することとし、今回は主に「慰安婦」の実情が「4つの要件」(前述)に該当することを原告が確信していたことを明らかにするとしました。そして、徴募形態(略取・誘拐・人身売買)、「慰安所」における「慰安婦」の状態について、様々な史料をあげて論じ、「慰安婦」が「4つの要件」に該当し、性奴隷としかいいようのないことを示しました(なお、女性たちがどのような形態で徴募されたか(=強制連行の有無)が、性奴隷か否かを論じる際には、第一義的な問題ではないことも、原告側は確認しました)。さらに、日本国内の公娼制度が人身売買と自由拘束を内容とする事実上の奴隷制度であるとの公論が、1920年代までに広まっていたことをあげ、それならば「慰安婦」制度は、略取・誘拐・人身売買と、公娼制度以上の自由拘束を内容とする奴隷制または性奴隷制というほかない、と論じました。
 さて、上の「4つの要件」をめぐる被告側の主張に対する原告側の全面的な批判について、紙幅の都合上すべてを取り上げることはできませんので、ここでは「居住の自由」をめぐる議論のみを紹介します。被告側は、「慰安婦」に「居住の自由」があったとは主張ができなかったようで、「現代のサラリーマンと同様、会社等からの業務命令によって居住の自由が一定程度制約されるのは労働契約上当然」として、「慰安婦」に「居住の自由」がなくても問題がないとの認識を示していました。これについて原告側は、被告は「居住の自由」が何かを理解できていないと批判しました。すなわち、「慰安婦」は軍が設置した「慰安所」の特定の一室で過ごさなければならず、「居住の自由」がなかったのに対して、「現代のサラリーマン」は勤務先に通勤可能な場所であればどこにでも住む自由があり(転勤命令があったとしても同様)、両者が全く異なることは明確であると述べました。
 以上をふまえ、大森弁護士は、吉見氏は適切な手続き・論証を経て、合理的な根拠に基づき確信をもって「慰安婦」は軍性奴隷だと論じていたと結論づけました。また、「原告の著書の中で、慰安婦は性奴隷であると断定している部分は捏造である」と述べていることについて、被告側は「捏造」の根拠を全く示すことができていない、と批判しました。
 最後に、「相当性の抗弁」(②)をめぐって、被告側は被告が「慰安婦=性奴隷説」を捏造であると信ずることに相当の理由があると主張しているが、被告側が論ずるべきは、原告が「慰安婦」が「性奴隷」でないことを知りながら、だまして書いたと信じるについて相当の理由があったかどうかである、としました。

<今後の裁判の進め方をめぐる議論>
 双方の主張の後、今後の進行について、議論が行われました。
 まず、原告側は、「慰安婦」の実情が国際法上の「奴隷」または「性奴隷」の定義に該当しないとの被告側の主張に対して、次回の口頭弁論で反論する旨を述べました。一方、裁判官は、次回に被告本人訊問をしてはどうか、と提案しました。これに対して、原告代理人は次のように応答しました。裁判には順序があって、第一にお互いに主張を尽くす、その上で争点を明確にする、そうしてはじめて争点について証拠を調べて、どちらが正しいのかを決めるのである。まだ争点が明らかになっていないのに、本人訊問をするのは問題である。被告側が国際法上の「奴隷」または「性奴隷」の定義に「慰安婦」が該当しないと主張していることについて、原告側はまだ反論していないではないか、と。
 一方、被告側からは、これ以上裁判に時間をかけるのは「衆議院議員の桜内の人権を侵害している」とか、「問題発言は2行ですよ」等の発言がありました。これに対して、原告側は、名誉を毀損され、大きな損害を受けているのは原告である、と批判しました。また、傍聴席の一部からは裁判を妨害する発言が相次ぎ、原告代理人が「勝手にしゃべらないでください」と注意しました。
 法廷が騒然とする中で、裁判官は「今後の進行について合議します」と一時退室しました。再開後、裁判官は原告側の意見をいれて、まずは原告の考える主張・立証を尽くしてもらうことにすると述べました。こうして16時頃に閉廷しました。

2.報告集会
 16時半過ぎから、日比谷図書文化館で報告集会が開催され、約80人が参加しました。
 最初に、梁澄子共同代表が挨拶しました。朝日新聞による「慰安婦」問題の検証記事以降、「慰安婦」問題を否定する人々は勢いづいており、そうした雰囲気は、ヤジなどから今日の傍聴席でも感じられた、それだけにこの裁判の重要性はさらに高まったのではないか、と述べました。
 次に弁護団から口頭弁論の報告がありました。大森弁護士は、被告側が追加の証拠として朝日新聞の記事を出したことについて、被告側は「吉田清治証言が撤回された以上、『慰安婦』問題はない」との主張をしたいようであると指摘。日本社会から『慰安婦』問題を葬り去ろうとする動きであり、断固として許すことはできないと話しました。穂積剛弁護士・渡邊春己弁護士は、名誉毀損事件の最高裁判例等に言及し、今後の裁判の見通しを述べました。緒方蘭弁護士は、自身が弁護団最年少であることを踏まえ、この重要な問題を若い世代が伝えていく責任があると述べた上で、「事実の力」をもって闘っていくことの重要性を訴えました。
 続いて吉見氏から挨拶がありました。第一に、被告側は、「慰安婦」が「四つの要件」(前述)に該当しないことを熟知していながら、「慰安婦」を性奴隷であると吉見が書いたということを立証しなければならないが、全くできていないと指摘。「慰安婦」が「四つの要件」に該当することは、今回の原告準備書面で詳細に書いてあるが、きちんと読めば被告側は自分たちの主張が誤っていることが理解できると思う、と述べました。第二に、朝日新聞が吉田清治証言を虚偽であるとして取り消したことをもって、「慰安婦」問題全体がねつ造だということを、被告側はいいたいようであるが、吉見氏自身はこれまでの「慰安婦」問題に関する著作において吉田証言は一度もとりあげておらず、それを元に議論を展開していないと強調。河野談話でも吉田証言は一切採用せずに、重大な人権侵害、強制性があったことを認定していることをあげ、被告側の議論は全く破綻していると批判しました。
 質疑応答を挟んで、吉田裕共同代表の挨拶がありました。吉田共同代表は、この裁判は、研究者と市民が一緒に運動しているところに特徴があると指摘。また、既存の研究成果でも十分に被告側を論破することは可能であるが、この機会に未調査史料を徹底的に調べ、研究を深化させたい、と述べました。こうして18時過ぎに報告集会は終了しました。

(一事務局員)


*次回口頭弁論は、2014年12月15日(月)です。詳細はこちら。引き続き、ご支援をお願いします。

2014-09-04

第5 回口頭弁論&報告集会のお知らせ

第5 回口頭弁論のお知らせ

日時:2014年9月8日(月)、午後3時~
場所:東京地方裁判所103号大法廷

これまでの口頭弁論では14時40分までに来た方を対象として
抽選が実施されています。お早めのご来場をお願いします。
なお、今回の抽選の有無については、決定次第、ウェブサイト(yoisshon.net
にてご案内します。

※裁判が終わりしだい(時間未定)、東京地方裁判所近
くの
日比谷図書文化館4階スタジオプラス(小ホール)
にて、
報告集会を開催する予定です(参加費:500 円)。
ふるってご参加ください!!

2014-08-31

吉見裁判第4回口頭弁論&報告集会 参加記


*第4回口頭弁論の内容*


 去る519日午後3時より、吉見裁判の第4回口頭弁論が、東京地裁103号大法廷にて行われました。この日も約100席ほどの傍聴席がほぼ満席となりました。

 今回の裁判では、被告側が第2準備書面を読み上げ、それに対して原告側が第4準備書面を読み上げました。今回の被告側の主張をまとめると、1.原告は被告発言を2つのパラグラフに分けて恣意的に解釈している。2.被告の発言は口頭でなされたものだから、ある程度不正確であってもやむを得ず、また、司会者の発言を受けてなされたものであるから司会者の発言の真意も加味して理解されるべきものである。3.「これは捏造」の「これ」については解釈の幅がある。原告の主張どおり「吉見さんという方の本」だとしても、岩波新書の『従軍慰安婦』なのか、その英訳本なのか特定できていない。よって何を指しているのかわからないのだから名誉毀損は成立しない。被告は一貫して「『慰安婦=性奴隷』は捏造である」と主張している。その証拠に被告は発言時には原告の本を読んだこともなかった()したがって、捏造と呼んだのは「慰安婦=性奴隷」という概念であるということでした。


 これに対し、原告代理人の川上弁護士は大きく分けて2つの論点から反論を行いました。1.「これは捏造」の「これ」は通常の日本語読解からすれば「吉見さんという方の本」としか見ることができない。2.「これ」は、岩波新書の『従軍慰安婦』、その英訳本に限らず、会見を見た一般の視聴者は「吉見さん(という学者)の書いた『慰安婦』に関する本全般」であると解釈する。よって「これ」が明確にされていないということはない。したがって、この理由だけで損害賠償を請求するに十分であると改めて説明しました。その上で、今後の裁判進行について被害立証の段階に進めたいとして、被告側の「真実性の証明」がないなら原告尋問へ進みたいと述べました。


 そして、裁判官は被告に対し、「いろんな証拠によって明らかとされております」と言った「いろんな証拠」を証明してはどうかと促しました。続けて裁判官は、「権利侵害なのか正当な言説と認められるのかどうかを判断するためには、『この程度は正当な言説である』という被告の主張の根拠を出してほしいと裁判所としては言わざるを得ない。」として、被告に証拠を示すように求めました。被告はこれに対し「真実性の証明」を行う準備をすると述べ、次回裁判では、被告は主張の証拠を示し、原告は損害立証を行うとして、345分頃に閉廷しました。




*拡大報告集会  −夜のYOいっション− *


  午後6時から豊島区民センターで開かれた拡大報告集会では、まず大森典子弁護士から本日の裁判について説明がありました。大森弁護士によると、「被告の『これは捏造』という発言は、普通の人が普通の注意力をもって聞いていれば、吉見さんの本が捏造に基づいているとしか聞こえないものだが、この間、被告はずっと『これは』の対象は『慰安婦=性奴隷』という概念を指していると主張してきた。しかし今回、『真実性の証明』を求めたところ、これに応じるようであり、裁判進行に少し進展が見えてきた」とのことでした。

 「真実性の証明」とは、「自分は真実を述べている」ということを証明することで、他人の名誉を毀損する恐れがあっても公益のために真実を述べたと認められる場合に限り、損害賠償責任を免れるというものだということでした。大森弁護士は「話は第1回の口頭弁論に戻った」と述べ、被告は、吉見さんの著作に絡めて「慰安婦は性奴隷ではない」と主張してくると考えられるとのことでした。大森弁護士は、続けて、「慰安婦」が性奴隷状態にあったということは、1992年以降、国際的に定着したものであり、国際法研究においても疑いもなく認められていることを考えると、このような裁判をしていること自体が日本の「ガラパゴス」的状況を表していると指摘し、どのような抗弁が出ても「慰安婦」制度は性奴隷制度であるということを明確にするとともに、吉見さんに対して名誉毀損が行われたということを立証したいと強調しました。

  続けて吉見義明さんから挨拶がありました。吉見さんは「この裁判は、いかなる意味でも学術論争にはなり得ない。何より被告は著作を読んでいないのであり、学術論争にならない。またどのような学説であっても、『捏造』であるとか『でっちあげ』であると言うことはない。それは論争から一線を越えるものである。」と、被告が度々主張している「学説の対立に過ぎない」とする反論を批判しました。そして、今や『慰安婦』制度は性奴隷制度だということは国際的な認識であり、これを捏造だと認めれば日本の裁判所が恥をかくだけであると強く述べ、各地で「慰安婦」問題に関わる講演会に招かれていることに触れて、「荒畑寒村のように『慰安婦』全国伝道行商をしていきたい」と笑顔で締めくくりました。




*排外主義・レイシズムとネット社会−「慰安婦」問題を題材に*


 この日は、続けて中西新太郎さんによる講演がありました。「排外主義・レイシズムとネット社会−『慰安婦』問題を題材に」と題されたこの講演では、「慰安婦」問題を焦点とした歴史認識問題が、排外主義・レイシズムへの接近にどのような影響を与えたのかを中心に論じられました。


 中西さんは「ネット右翼」の主張内容は独自に構築されたものというより、「ポスト戦後右翼」の言説に由来することを説明し、1990年代以降、東アジアにおける日本の軍事・経済・政治的影響力の低下が中韓への憎悪に結びつき得たこと、「自虐史観」という言葉の誕生とその典型例としての「慰安婦」問題があることを指摘しました。すなわち、「強制連行はなかった」、「戦争時に売春はつきもの」というように、女性の奴隷的拘束という事態を違う話にすり替え、「自国の歴史に韓国、中国が口を出すのは許せない、反撃すべき」として、「慰安婦」女性が謝罪と補償を求める正当な行為を理不尽な攻撃として見なし、さらに「『特ア』の理不尽な攻撃は、そもそも民族としておかしいからだ」というレイシズムへの回路を開いたことを論じました。


 また、このような「立証」操作を支えてきた右翼言説が昨今のネット言説にどのように絡み合っているのかについて、「ネットde真実」の例を挙げました。ネット上の言説を「真」と見誤り、それを社会に拡散しようとする動きには、「『反日教育』−体制的秩序からの『解放』」としてのインターネットとネット言説があり、拡散者が自身を「反体制」であると錯覚していること、しかし実際にはこうした言説は政治的なサポートを受け、右派政治家との「連携」関係を組み込んでいることを指摘しました。最後に、このような荒唐無稽な保守言説が社会的な位置を占めてきている危機をあらためて考えなければ行けないと締めくくりました。


 質疑応答では、「現在の排外主義やレイシズムは戦後改めて出てきたかもしれないが、戦前から引き継がれ批判されてこなかったテーマではないのか」といった質問が多く寄せられました。これに対し、中西さんは、「過去を清算してこなかったことが今の状況を許しているという歴史的な要因があることは明確」としつつ、「ここ20年くらいの傾向として、新自由主義国家の枠組みの中で右派言説が有効なものとして用いられている特徴がある」と述べ、「事実を事実として認め、共通認識として確定されたものをゆるがせにしてはいけない」と改めて強調しました。




*けっして「学説論争」ではない*


 拡大報告集会には約90名の参加があり、活発な質疑応答が行われましたが、紙幅の関係上すべてをお伝えできないのが残念です。今後もこのような集会が開かれると、この裁判を通じた学びをより広く開いていけると思います。 最後に、今回の裁判において、被告が再三にわたり学説論争の形を演出しようとしている点は看過できません。今回の口頭弁論では、江上波夫の「騎馬民族征服王朝説」が「ファンタジー」、「珍論」と批判されたことを引き合いに出し、「自身の説が捏造でないと考えるのであれば、学問研究の場で、被告に対し対抗すればよいのである」と主張しました。第2回口頭弁論においても「邪馬台国九州説・畿内説」を引き合いに出しましたが、被告はこの裁判で学説対立を装うつもりなのかもしれません。しかし、吉見さんが報告集会の挨拶で述べたとおり、「捏造」という言葉は学説批判の域を越え、到底許されるものではありません。私たちは今後も被告の主張に注意する必要があると感じました。また、このような主張がまかりとおるような日本社会のあり方、これまで過去清算に向き合ってこなかった日本政府の姿勢も含めて、今後とも追求していくことが重要であるということを改めて実感しました。その意味においても、この裁判のもつ社会的な意義を、より多くの人たちと分かち合いたいと思います。


(一事務局員
)

2014-05-23

東京歴史科学研究会2014年度歴史学入門講座:吉見義明氏「日本軍「慰安婦」問題と歴史学」

関連行事のご案内です。
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東京歴史科学研究会2014年度歴史学入門講座

講師:吉見義明氏(中央大学教授)
講演題目:「日本軍「慰安婦」問題と歴史学」

 1991年、元日本軍「慰安婦」であった金学順さんが、日本政府に謝罪と賠償を求めて名乗り出ました。それから20年以上の間、「慰安婦」問題の解決を求める運動が粘り強く展開されてきました。しかし、いまだに被害女性たちの名誉と尊厳は回復されていません。それどころか、政治家から被害事実を歪める発言が相次ぐとともに、インターネットなどで「慰安婦」問題に関して誤った情報が拡散されています。
 それでは、「慰安婦」問題をめぐって、歴史学はいかなる役割を果たすことができるのでしょうか。「慰安婦」問題とどのように向き合っていくかを考えるために、今年度の入門講座では「慰安婦」研究の第一人者である吉見義明氏にご講演いただきます。

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日時:2014年719日(土)14時開始(13時半開場)
会場:立教大学池袋キャンパス14号館D201
    (池袋駅西口より徒歩約7分)
参加費:600円
※事前申し込み不要。直接会場にお越しください。
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【吉見義明氏の著作】
『従軍慰安婦』(岩波新書)、『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(岩波ブックレット)、『焼跡からのデモクラシー―草の根の占領期体験―』、『毒ガスと日本軍』(以上、岩波書店)、『草の根のファシズム―日本民衆の戦争体験―』(東京大学出版会)など

*東歴研ウェブでもご案内しています

*PDFビラ

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東京歴史科学研究会
TEL/FAX 03-3949-3749
〒114-0023 東京都北区滝野川 2-32-10-222(歴科協気付)

2014-05-20

吉見裁判 第5回 口頭弁論のお知らせ(速報)

吉見裁判 第5回 口頭弁論のお知らせ(速報)

5月19日(月)、吉見裁判第4回口頭弁論が開かれました。
次回(第5回)の日程が決まりましたので、お知らせします!!

 日時: 2014年98日(月曜日)、午後3時~

 場所: 東京地方裁判所 103号 大法廷

Access→ 東京メトロ丸ノ内線・日比谷線・千代田線、霞ヶ関駅A1出口から徒歩1分。有楽町線、桜田門駅5番出口から徒歩3分。 

!直前の急な変更もあります。念のため事前にご確認ください!
!!抽選の有無については、今後お知らせいたします。


※口頭弁論終了後に、報告集会を開催する予定です。詳細は、決まり次第、ウェブサイトで発表させていただきます。ご確認をよろしくお願いします。

2014-04-20

事務局からお詫びとお知らせ

 年会費2,000円をお支払いいただき、「YOSHIMI裁判いっしょにアクション」(YOいっション)にご入会いただいたみなさまに、お詫びとお知らせがございます。
 会員のみなさまから、「入会手続きをとったにもかかわらず、事務局から一切連絡がない」とのお問い合わせを、いただいております。YOいっションでは、現在、会報第1号の作成を進めております。5月初めには会員のみなさまのお手元にお届けできる見込みです。入会手続きをとられてから、長期間にわたってなんのご連絡も出来ず、大変申し訳ありませんでした。今暫くお待ちいただければ幸いです。
 このたびは大変ご迷惑、ご心配をおかけしておりますが、今後ともご支援・ご協力をいただければ幸いです。

第3回口頭弁論の報告&参加記

吉見裁判 第3回口頭弁論の報告
 3月3日午後3時、
吉見裁判第3回口頭弁論が東京地裁103号大法廷で開かれました今回もたくさんの皆さんにかけつけていただき傍聴席を埋めることができました。ありがとうござました。
 今回の法廷では原告準備書面2および3が陳述されました。準備書面2は、被告の名誉毀損発言の経緯と趣旨を明らかにしたうえで、これが名誉毀損に当たることを「要件事実」に沿って論じ、第2回弁論で陳述された被告の準備書面1に対して全面的に反論する内容です。渡邊春己弁護士が法廷で詳しくその内容を説明しました。備書面3は、被告の名誉毀損発言によって原告の吉見義明教授がいかに大きな損害を被ったかについて実例を細かく挙げる内容で、れについては穂積剛弁護士が法廷で全面展開しました(詳しくは以下の裁判傍聴記をご一読ください)。
 弁論後の報告集会にも100名ほどのご参加をいただきました。
 第4回口頭弁論は5月19日15時開廷(14時半頃から抽選予定)です。引き続き大法廷を埋めるべく、皆さまのご支援とご協力をお願いいたします。
 ※裁判報告集会は18:00~豊島区民会館で行います。

吉見裁判 第3回口頭弁論 参加記

  33日、第3回口頭弁論が開かれた。

私は吉見先生の裁判の行方を固唾をのんで見守っている者の1人だ。第1回口頭弁論での被告の姿を通して、日本社会の底流に沈殿し続けている歴史修正の汚濁との正面対決の到来を、私は感じた。そればかりでなく桜内氏は「慰安婦」が性奴隷だというのは「虚構の事実」だと述べ、今後の裁判の行方を規定するような重大な主張をした。第三回を迎えた今日、東京地裁に足を運んだ方々は傍聴席の定数を大きく超え、抽選がおこなわれる程にあふれた。

103号法廷は、傍聴券を手にした幸運な人々で満席になった。被告が法廷に姿を現すや否や、傍聴席に向かって手招きし、程なくして1人の女性が被告に駆け寄った。被告は女性の目を見ることもなく何かを言いつけ、女性は重たそうなバッグの中から書類の束を取り出し何かを探している。秘書の様にも見えるその女性の横で被告は時間の経過ばかりを気にし、明らかに苛立った様子。必要な書類を手にしても被告は女性の目をみることはなかった。こうした態度を見て私は、人間は身の程をしらずに「偉く」なってしまってはおしまいだと感じた。

原告席に目を移せば、真剣な面持ちで定刻を待つ弁護団の皆さん。そして穏やかな表情の吉見先生の姿があった。吉見先生の白髪が事実に誠実に向き合う歴史学者の清廉さに重なって、これから始まる口頭弁論と、この裁判が日本社会に問いかけることの重大さを想像させ、気持ちが引き締まるのを感じた。

法廷では、原告側から提出された準備書面が詳細に確認された。渡邊春己弁護士が被告の発言に検討を加え、桜内発言の一体何が問題であるかを理詰めで論証した。裁判後の報告集会でも話されていたが、日本語の文法からしても言い逃れができないほど明らかな名誉毀損の発言が桜内氏によって行われたことをつきつけた。つまり、指示代名詞「これ」は直前の内容を指すのであるから、被告が「これ」という指示代名詞を「吉見先生の本」という以外の意味で使ったと読むことはできない、ということである。文法上も「これ」は「Sex Slavery」などとは言えず、言い逃れはできないということである。さらに穂積剛弁護士は、桜内発言によって吉見先生が被った損害がいかに大きいかを論証した。513日に端を発した維新の会・橋下徹氏の「慰安婦が必要なことは誰にだってわかる」という発言は、同日午後の「米軍にも風俗を活用せよ」と進言したことと相まって国内外に批判を広げた。韓国、中国、米国などをはじめEUなど、批判は世界中に広がった。そんな中、527日に行われた外国特派員協会での記者会見は、世界中の大きな注目を集めた。そうした場で、桜内氏は世界に向けて問題の発言を行った。

会見の模様はインターネットでも中継され、私もリアルタイムで視聴した1人だが、11万5千人を超える来場者と、13万以上のコメントが寄せられた。問題の桜内発言を受けた視聴者のコメントには「ねつ造」「詐欺本」など、吉見先生の本がねつ造であると理解した書き込みで溢れた。その後も動画はネット上に存在し続け閲覧者は増えている。さらに維新の会の公式ホームページにも動画がアップされている。

事実の究明を使命とする歴史学者にとって、世界中のメディアに大きなインパクトのある場で、それも衆議院議員という社会的地位の高い被告によってなされた行為から被る損害の大きさは計り知れない。穂積弁護士は桜内氏に対して、外国特派員協会に謝罪と訂正を行うよう求めた。

こうした原告側の主張に被告側弁護士は一切こたえず、それどころか「訴状と請求原因が違う」「内容を変えたのか」など、言っても言わなくても良いような発言を繰り返した。そもそも、原告側の準備書面は26日の段階で提出されていた。それから1ヶ月の月日は、「『慰安婦』=性奴隷、これはねつ造」なども含め原告自らの主張に誇りがあり、嘘偽りが無いものならば、心血注いで抗弁をまとめるのに十分な時間ではなかったか。正々堂々と主張して見せよ! 私は憤った。裁判官は「原告の主張の中身に違いはない。被告側は真実性(被告は「慰安婦」=性奴隷という認識がねつ造だと主張しているので、立証が必要)の抗弁はしないのか」などと被告側に気を使う程の滑稽さだった。指示代名詞「これ」は直前の内容をさす。そんなことをおさらいするために多くの傍聴者は裁判所に来たのではない。法廷は日本語の文法を学び直す場ではない。

 

弁論に続いて開かれた報告集会でも机椅子が足りなくなるほどに参加者が溢れた。未だ被告がどのような抗弁を組み立ててくるかは分からない。会場からも「今この裁判がどんな地点にあるのか。今後の展開は?」という質問が寄せられた。

 

渡邊弁護士は、被告側弁護士が置かれた状況について、「第1回の意見陳述で桜内氏は『(吉見先生が著書で)世界に嘘をまき散らしている』と発言した。これは『吉見先生が嘘と知りつつ本を書いた』ということになる。これを立証できるか?できっこない。私が相手方の弁護士なら逃げたい。だから『これ』がさす内容だとか、『訴状と請求内容が違う』などと言って逃げ道を探している」と説明した。

大森典子弁護士は、「桜内発言のみで名誉毀損が成立すれば、この裁判は終わる。ところが桜内発言の『これ』は吉見さんの本のことではないと抗弁している」と述べ、「被告側が『「慰安婦」は性奴隷制度というのはねつ造』だという主張を本格的にしてきたら正面から潰して行くことになる。この中身は、次回の口頭弁論までには出てくるのではないか」との見解を示した。

吉見先生は報告会で弁護士の方々の報告を聞き、「だんだん腹が立ってきました」と話し、会場の笑いを誘った。そして河野談話をとりまく状況を述べた。

201310月、産經新聞は出所を明らかにせず、河野談話の元になったという韓国人「慰安婦」被害者16人の証言を入手したと報道し、聞き取り方が「ずさん」などという記事を掲載。その後、『正論』も入手経路を明かさず、「慰安婦」問題を検討する際に最も重要な悲惨で生々しい性的な描写を一部削除して16名の証言を掲載した。

軌を一にして、国会では日本維新の会が河野談話の見直しを迫る動きを強めている。これを受け、政府は非公開の極秘チームを立ち上げようと動いている。こうした一連の逆行の狙いは、「慰安婦」の強制性を否定し、政府の責任を否定し、軍「慰安婦」は性奴隷制であるという認識を否定しようというものだ。

吉見先生は、そもそも河野談話で何が確認されているかに言及し、慰安所は、当時の軍当局の要請により設営」され、「慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送は、旧日本軍が直接あるいは間接に関与」し、「慰安婦の募集は、軍の要請を受けた業者が主として当たり、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多く」あり、「官憲等が直接これに加担したこともあった」と認めたもので、官憲が直接関わった事件として、スマラン事件は揺るぎない証拠である、さらに、「慰安所での生活が痛ましいもの」であった事実は、元日本軍兵士の証言からも明らかであると述べた。

最後に吉見先生は「河野談話から一歩も後退してはならない」と力を込め、さらに河野談話を以下の方向で強化する必要があると指摘した。

1、河野談話では一貫して「軍の関与のもとに」という表現で責任が語られており、主語が曖昧である。主語を「日本軍が」と明記するべきである。

2、「慰安婦」制度が軍による性奴隷制度であったとは踏み込んでいない。きちんと記載すべきである。

3、「慰安婦」は、当時の国際法に照らしても違法であった問題であり、日本政府の法的責任を認めるところまで明記するべきである。

 

 私は、吉見先生が原告となって闘うこの裁判が勝利するために力を尽くしたい。私は中央大学の学生だった頃、吉見先生の講義を受けた。「慰安婦」という言葉は知っていたけれど(教科書にも「慰安婦」の記載があった)中学や高校の授業では殆ど中身には触れられなかったので、問題の本質を知ることはできなかった。何より、戦争していた頃の出来事であって既に終わった問題だと思っていた。大学4年の時、商学部の先生であった吉見先生の講義を他学部履修し、私はこんなにも過酷な人生を背負わされてしまった女性たちが存在し、まだ生きていらっしゃること、自らの人間の尊厳をかけて遠く日本の地に赴き裁判を闘っていることを初めて知った。私は、吉見先生の授業の中で中国人「慰安婦」被害者の裁判を知り、いてもたってもいられず東京地裁に駆けつけた。その裁判では、「慰安婦」の事実認定はされるも敗訴。泣き崩れる原告の姿・・・。私は、決してこのままでは許されないと、我が身を焼け尽くしそうな怒りを感じながら帰路についたことを今でも鮮明に覚えている。以来、私は「慰安婦」問題を一日たりとて忘れたことはない。自分にできることは、ただひたすら「慰安婦」の事実を、蹂躙された女性たちの人生を、多くの人々に知らせること! 私はそう決意し、あの日から行動を続けてきた。私にとって、大学時代に最も衝撃を受けその後の生き方に大きな影響を与えられた講義は、吉見先生の講義をおいて他にない。私に歴史に向き合うことの大切さを教えてくださった吉見先生に、感謝してもしきれない。

私は今、改めて思う。「なかった」「あった」などという机上の空論に時間を費やす暇はない! 数多くの被害者が実名で体験を語っているし、日本が過去の過ちを認めるに足る十分すぎる資料が既に発見されているからだ。吉見義明著『従軍慰安婦』(岩波新書)を執拗に維新の会などが攻撃するのは、そこに揺るがぬ真実が書かれているからだ。

被告側の抗弁がどのようになっていくか。吉見裁判はこれから益々目が離せない。私も微力ながら裁判をともに闘いたい。頑張りましょう。(池内 沙織)