YOSHIMI裁判いっしょにアクション!
「吉見裁判」とは、中央大学の吉見義明さんが、日本維新の会の桜内文城衆議院議員(当時)を名誉毀損で訴えた裁判です。

2014-02-18

吉見裁判 第二回口頭弁論(2013年12月11日)参加記



20131211日、東京地方裁判所103号大法廷において、吉見義明教授(中央大学)が桜内文城衆議院議員(日本維新の会)を名誉毀損で訴えた民事裁判の第2回口頭弁論が行われました。当日は約90枚の傍聴券を求め、130人余りが列を作り抽選が行われました。この裁判の注目度の高さがうかがえます。

15時過ぎから開始された口頭弁論では、まず、被告の準備書面の要約を代理人の荒木田修弁護士が述べました。これに対して原告代理人である川上詩朗弁護士が反論し、渡邊春己弁護士が次回の裁判で主張する要点を提示して、30分ほどで終了しました。

被告側の主張の要点としては、原告は名誉毀損の請求原因を特定できておらず名誉毀損の成立要件を満たしていないため、不当な提訴であるということです。具体的には、被告が橋下大阪市長の記者会見の冒頭で述べた「これは既に捏造だということがいろんな証拠によって明らか」の「これ」は「慰安婦が性奴隷である」ということであり、原告の著作を示さない。捏造というのは「事実でないことを事実のように拵えて言うこと」であるので、「慰安婦が性奴隷である」というのは概念であり事実ではないので名誉毀損は成立しない。仮に原告の主張通りに「これ」が著作を示すとしても、著作は本であるので事実ではなく、名誉毀損の要件を満たさない。また、「慰安婦が性奴隷というのは捏造である」という主張は、被告の独自の説ではなく多くの学者や評論家、漫画家などが主張しているので被告のみを訴えるのは不当である。被告の発言は対立する学説を否定するためのものであり、慰安婦が性奴隷か否かの論争としてとらえるべきで、邪馬台国畿内説・九州説の論争と同じものである(!)。すなわち、被告の発言は名誉毀損には当たらず、不当な提訴である、と主張していました。

原告側は、問題となっている「これ」の前には「慰安婦が性奴隷」という発言は全く登場しないことから被告の主張は全く成立せず、「これ」が原告の著作を示すことが明らかであり、被告の主張は全く独断で非常識な解釈だと反論しました。また、社会通念上「著作が捏造」だと言う場合、「著作の内容が捏造」といっているに等しいと主張し、これに対しては裁判官から、多くの場合そうであるとの理解を得られました。原告側は、次回以降指示語である「これ」が指示する語句を発言の文脈から特定させるとともに、被告の発言は原告の社会的評価の低下をもたらしており、名誉毀損の要件事実を満たしていることを判例を摘示する事で明らかにすると述べました。

続いて17時過ぎから、弁護士会館において「YOSHIMI裁判いっしょにアクション(略称YOいっション)」準備会主催の裁判報告集会が行われ、約40名が集まりました。本集会では弁護団による今回の裁判の解説や、荒井信一氏と西野瑠美子氏から本裁判と関連して日本軍「慰安婦」について理解を深める報告がありました(カンパでは、10,873円が集まりました)。

渡邊弁護士の解説によると、今回の裁判で被告側が「原告が請求原因を特定していない」と主張したのは、この線から攻めるのが最も裁判所に受け入れられやすいと判断したからだとみられます。しかしそれでも無理のある主張であり歯切れが悪いものであったということです。これに対して裁判所は被告の主張には乗らず、原告側に反論の機会も与えられました。今後裁判は通常の名誉毀損裁判として進行する見通しであるということで弁護団は手応えを感じているようでした。次回以降はこれまで以上に丁寧に名誉毀損が成立するという主張を行なっていき、原告の著書のどの部分が捏造なのか被告に明確にさせていくということです。また、傍聴人や原告側弁護団の多さは、裁判所の判断に確実によい影響を与えているということでした。

続いて荒井信一氏が、「慰安婦、すなわち日本軍の性奴隷」という用語・認識は、国連の人権機関において199697年頃には成立していたことを具体的な資料に基づき説明し、「慰安婦、すなわち日本軍の性奴隷」が原告の捏造だとする被告の主張は完全に成り立たないことを示しました。

また、西野瑠美子氏が、最近の日本軍「慰安婦」をめぐる新聞記事が紹介しながら、メディアによる日本軍「慰安婦」への認識を後退させる動きが活発化していることを指摘して、本裁判の重要性を訴えました。

原告の吉見氏は、この裁判での被告の主張は無理があるのは明らかであるので、すっきり勝たなければならない、特定秘密保護法も成立する社会状況の中できちんと意見を表明することが重要であり、おかしいことにはおかしいと言わなければならないと述べました。

被告側は、被告本人のTwitterでの傍聴の呼びかけもむなしく動員については劣勢を感じているようで、次回はより動員をかけてくることが予想されます。また、法廷で有効な主張ができないことから、「原告は裁判にあたりいいかげんな書面しか出さず、不当な提訴である」というような主張を法廷外で展開する模様で注意が必要です。またこの裁判を「『慰安婦=性奴隷』捏造裁判」と位置付け、その主張をあらゆる手段を使って撒き散らす機会としており、予断を許さない状況であることには変わりません。

被告側は、法廷において、上記で紹介した以外にも、発言者本人は「これ」を「慰安婦は性奴隷」を指すつもりで発言したのだから、この発言は発言者の意図通りに解釈しなければならないというめちゃくちゃな責任回避を行っていましたが、これはもはや被告の政治家としての資質を疑うしかありませんでした。また、邪馬台国論争を持ち出してきて議論を撹乱するなど、これらの主張には説得力が全く無いどころか、「言葉遊び」に終始しています。被告側は裁判の結果を重視しているというよりも、法廷内外であらゆる方法を使って吉見氏の人格や信用をおとしめ、日本軍「慰安婦」は性奴隷であるという事実を隠ぺい・歪曲することが目的であると判断せざるをえず、これは卑劣きわまりありません。



なお、次回裁判は20143315時より、今回と同じ東京地裁103号大法廷において行われます。今回同様傍聴券の抽選・交付が行われる見通しです。
(一事務局員)